旅人の静かな思い[]
『原神』の稲妻で流れる音楽は、「Yu-Peng Chen@HOYO-MiX」が作曲を担当しました。その音楽は東京フィルハーモニー交響楽団と、日本でも指折りの伝統楽器奏者たちによって演奏され、HOYO-MiX及びSony Music Entertainment (Japan) Inc.によって共同制作されました。本動画は稲妻の音楽における創作理念と、一ヶ月半におよび両国のチームの異文化、異言語間で行われた遠距離での共同作業を記録したものです。
Zoe Cai, 音楽プロデューサー: 製品に適している、かつ新しいものを作る。これはHOYO-MiXの特徴であり、目指す目標でもあります。稲妻の音楽は璃月の時と同様、伝統楽器とオーケストラを融合させました。一番の違いは、日本伝統音楽の旋法を使ったことです。演奏は、和楽器奏者の方々と東京フィルハーモニー交響楽団にお願いしました。普化尺八、箏、三味線、太鼓の和楽器は、稲妻音楽の至る所で使われています。これらの楽器のパートは伝統的な奏法を元に現代に沿った変更を加えました。また、音楽の伝承性を保つために耳馴染みのあるメロディをアレンジしました。例えば皆さんが聞き親しんでいるバトルテーマの稲妻バージョンや、『さくら』のオマージュである雷神のテーマなど懐かしさと目新しさを感じて頂ければと思います。
Yu-Peng Chen, 作曲家: 今回はSony Musicにご協力頂いて、東京フィルハーモニー交響楽団と、著名な指揮者である栗田博文さん、音楽監修に宮野幸子さん、それから優秀な和楽器奏者や歌手の方々をお招きしました。このご時世ですから、リモートで、約1ヶ月半に渡って収録を行いました。事前の打ち合わせ等を含めれば、4ヶ月ほどかかりました。今回のリモート収録は、コミュニケーションで一番苦労しました。
Yu-Peng Chen, Composer: こんな感じのコミュニケーションは、一往復で4、5分ほどかかってしまうので、最初は順調とは言い難かったです。奏者と指揮者のコンディションに影響を与えてしまうことは、わかっていたのですが、こういう環境だからこそ、お互いの信頼を深められると思いました。しばらく経ってからは、こちらからの変更のリクエストをすることが少なくなりました。日本にいる音楽監修の宮野さんと現場での判断が、信頼できるとわかったからです。彼女からの改良のアドバイスを出すこともあれば、指揮者の栗田さんから宮野さんへ楽譜について質問することもあって、コミュニケーションがかなりスムーズになりました。オーケストラが休みの日に、録音を聞き返して、調整する必要があれば、次の収録日で改善してもらうようになりました。この間の双方の歩み寄りで、私もとても勉強になりました。
今日最後の数曲は特に感動しました。今日はマリンバから始まる曲があって、ちょっと難しく書いてしまって、実際に演奏するのは厳しいのではないかと思い、2バージョン作りました。でも奏者の方は演奏すると強く言ってくれて、たぶんたくさん練習してくれたと思います。音を聴いたらすぐにわかりました。とても複雑なマリンバパートなので、最初は伝え方が悪かったのかもしれません。この楽器はやめようではなく、この楽器のないバージョンを先にやってみたいと言うのが正しかった。奏者の方を傷つけたかもしれません。今後は気をつけなければと反省しました。
栗田博文, 指揮者: 3日間今回レコーディンさせて頂きましたが、本日無事にこれでホッとしています。たくさんの楽器を使い慣れていて、またその使い方が楽譜を見ていくと、非常に効果的にサウンド作ってらっしゃるなって感じましたね。楽譜に書かれていることをできるだけまず忠実にすると、その裏側にある皆さんの思いみたいなものが具体的なサウンドになっていくかなってトライしていきますので、そう意味では、とてもいい演技できたんじゃないかと思っています。
宮野幸子, SHANGRI-LA Sound Director: 中国人の陳先生が、日本をイメージされて作ってる曲だと思うので、日本人はこういうのは逆に思いつかないっていうような、日本的な旋律なんですけど、どこか日本っぽくないパラレルワールドみたいところが、すごく逆に素敵だなと思いました。
Yu-Peng Chen, Composer: 日本の奏者は細かい所でもとても真面目で、楽譜の表情記号を忠実に演奏してくれます。感動しました。一番印象深かったのは、あんなに大人数なのに、収録中にほとんど雑音がなく、誰も楽器以外の音を出さなかったことです。静かな曲の収録中は、全員が息を止めているんじゃないかってくらい澄んだ音になりました。
今までのエリアのバトル曲は人気だと聞いたので、今回の稲妻のバトル曲もたくさんの時間をかけました。今回は一曲多く作って、野外バトル曲が4曲、それぞれ異なる楽器の組み合わせになります。例えば太鼓、三味線、普化尺八と、和楽器だけで構成された曲は、楽式は現代の電子音楽のスタイルを取り入れて、ビルドアップとドロップがあります。和楽器をベースにオーケストラとボーカルを入れた曲もあります。もう一曲は太鼓の激しいリズムに、弦楽器の稲妻テーマ曲の穏やかなメロディを加えて、執着の雰囲気を作りつつ、悲しげな感情を表現しました。
渡邊香澄, Koto & 25-string Koto player: 二大流派がありまして、生田流と山田流があります。私は生田流の方で演奏していまして、この四角い爪で演奏するのにあたって、ちょっと斜め左向いて演奏するいう決まりがあります。そこが山田流のちょっと違いまして、山田流は、真っすぐ向いて演奏し、爪も尖がっていたりする。メロディーと共に変動していく曲がとても多いですけれども、どこかで繋がっていて、日本の五音音階を多用しているなとすごく思ったです。あとは壮大な自然を感じるイメージを強く受けました。普段から後ろにある25弦の琴を今年で誕生して30周年の記念の年なんですけれどもあちらの楽器をライフワークとして使用しておりまして、今回の曲を弾くのに箏がないとちょっと難しいところがたくさんあるので続けていてよかった。
寄田真見乃, Koden Shakuhachi Performer: 古典尺八の音は独特なので、今回の尺八パートの音のイメージに合わせて、尺八の音が伝わるかどうか心配でした。自然が織りなす神秘的な音や激しい戦い、儚さや強さ、そして自然の摂理など、ドラマ性が高い曲だなと思いました。尺八の場合、ビブラートは首を横であったり縦に振ることをユリって技法なんですけど、ユリをたくさん使ってビブラートを強弱をつけているので、それぞれパートによってすべて違うので、そこの違いを楽しんでいただければなっと思っています。
リモートで直接中国のプロデューサーさんの方と演奏して直ぐに聞いていただいて、リプライ貰ってここをもうちょっとこーいうニュアンスでやり取りで曲を作っていったんです。より一緒に作り上げている感がすごく感じられて、とても楽しく演奏することができました。普段の演奏の場合は、曲のはじめと曲の終わりに必ず合唱するようにしています。それは、聞きに来てくださったお客様にもなんですけど、すべてにおいて感謝の気持ちを込めて演奏できるように合掌するようにしています。
小山豊, Tsugaru Shamisen Player: 三味線にはいろいろ種類ありまして、僕は津軽三味線という数ある三味線の中で大きいな楽器なんです。譜面届いた時に、これまず一見して弾けないと思いました。難しい。「弾けるかな?」と思った。
先生が描いている音色とニュアンスと津軽三味線が持っている強さとか、そういうものが合致していなかったり、逆にいえばすごく合っている部分あったり、とにかく自分の中でも、かなり今までやってきたレコーディングの中でも、かなりのハイクラスの難しさを感じてます。世界に向けては、音をしっかり表現していくって結構責任も感じていますし、先生に喜んで貰いたいという奏者としてはそこなので、まだまだ始まったばかりですけど、先生のいいところちゃんと汲んで、世界観の1つになれるように頑張りたいと思っています。
Yu-Peng Chen, Composer: 三味線の奏者たちには特に感謝しています。今回の『原神』の音楽において、三味線は非常に重要な役割を持っていて、難易度も高い。皆様が時間をかけて練習してくださって、収録中も根気よく何度も相談しながら調整して、最終的に非常に良い結果を得られました。
Yuta Sumiyoshi, Kodo Taiko Performing Arts Ensemble Performer: 一曲目はかなり6時間かかりましたね。この調子で、あと4曲録ったらあと18時間かかるなあと思いました。でも、最終的には皆の身体にも少しずつ入っていって、1曲目の魂が一回体に入っちゃえば、2曲目、3曲目、4曲目は、割とスムーズに行けたかなと思います。そらぞれのセクションで別々に録っているので、例えば、オーケストラはオーケストラの方で録ってと、同時に一緒にやれないので、そこの息を合わせるのが、意外とちょっと今回難しく感じました。
日本を楽器を使っているのに、いい意味で日本ないというのがすごく気持ちよかった。ある意味ルーツを辿っていける感じがして、意味深い楽曲なんじゃないかなと思います。シルクロードを渡って僕ら楽器って来たんだと、改めて思わされたと、先生の楽曲はそれが果てしなく感じて、僕らも太鼓でドーンと一発打った時に、果てまで広がっていく音はイメージはしっかり持ってました。
Yu-Peng Chen, Composer: 太鼓チームの演奏もすごかったです。今回のバトル曲はリズムが異様に複雑なのに大人数でも正確にリズムがとれていました。十数人の奏者が同時に鳴らす太鼓の質感が、大変素晴らしかったです。太鼓の奏者の方は、歌が専門ではないのに、手伝ってくださって、良い感じだったのでそのままにしました。今後は一気に駆け抜けるような太鼓だけの曲も書きたいと思いました。太鼓の雰囲気は『原神』に合っているので、また機会はあると思います。その時はよろしくお願い致します。お疲れさまでした。
Hirofumi Kurita, Conductor: ありがとうございました。
千葉智史, Sony Music Publishing (Japan) Inc. Music Supervisor: 作曲、要はクライアント様のサイドが中国にあって、和テーマを元に日本のミュージシャンが参加して音の最終調整が確認してが行われるということだけで、まさに世界を又にかけて製作が行われたプロジェクトというのは自分的にも関われてし、『原神』というゲーム自体、全世界で発信されて思うので、クリエイターサイドや制作側の熱量が各地にこもったものが、世界の皆様に届くという考え深いです。プレイ実際にしてみると音楽と合わさって感動的なシーンとかがあったりして、広い世界の中で遊んでいるのにマッチした策金だと思っています。今回の曲に関してもそういった皆様のハッとなる体験を1つの要素となればと願っています。
Yu-Peng Chen, Composer: 音楽の合作は、本質的には文化の交流です。特にどうやって演奏していくかについて、それぞれの見方と解釈があって、お互いを尊重し、信頼し合うことが大切です。出来上がった音楽は非常に素晴らしいものでした。
栗田博文, 指揮者: 今回の曲を通して、こういう形で音楽を通じて、日本を、中国の方と文化交流をできたので、嬉しく思っていますし、今回収録した音源が全世界の『原神』のファンの皆さんが楽しんでいただければと嬉しく思っています。ありがとうございました。
Zoe Cai, Music Director: 文化を超えた合作、伝統的だけど伝統に囚われない音楽。プレイヤーの皆様にも、「ここが原神」だと感じて頂けたら嬉しいです。