主なき冠は、遂げられなかった想いセットの聖遺物である。
説明[]
かつて彼女の願いに応じて、故国が滅んだ後に輝きを失った羽飾りを再び作り直そうと言う人がいた。
そして彼女は、その尊敬に値する人にターコイズの冠で返すことを約束した。
だが漆黒の魔物が振るった刃の下、あの無残な死体を目にした少女は理解した。
この手で鍛造し、華やかに飾り付けられ冠は、戴冠式に現れない主人を一生待ち続けることになると。
長い年月が経ち、六つの部族の間である噂が広まった。亡くなった鉱山の老婦人が奇妙な趣味を持っていたというものだ。
その老婦人は様々な装飾品、それも煌びやかなものばかり好んで集めていたという。その多くは今の技術では造れないものばかりだそうだ。
中でも、ある職人の名が記されたものであれば、
彼女はどれだけ宝石を支払うことになっても、惜しまず買っていた。
たとえ、それが偽物であっても。
部族の者が、せめて偽物の作り手の欲を満たさないようにしたほうがいいと忠告した。
すると、老婦人はこう答えた。「彼の名声を汚すような偽物を野放しにはできない。」
それに彼女はいつも、偽物を生み出すような卑しい者を一度も見逃さなかった。
勇敢に死に赴いた友人と比べれば、彼女の人生はあまりにも長いものだ。
そこで彼女は残りの時間を、英雄たちが残したものを集めるのに使うことにした。
彼女の愛した赤い瞳の少年は、使命を果たした後に聖火の中へと還り、ほのかな温もりだけを残した。
寡黙な英雄が君王の炎の中に倒れたとき、その目に映った新世界は、彼にとって最高の報いであった。
騒々しかった双子の豪傑は、敵の手にかかる兄弟を目の当たりにして、悲しみのあまり声を枯らすまで泣いた。
「結局、アタワルパのほうが先に逝くなんて…一番弱かった私が最後まで生き残るのを、誰が予想しただろうか。」
「波風を経験した者はいずれ平坦な陸地に飽きてしまうと、部族の知者がよく言っていた。確かにその通りだと思う。」
「みんながいないこの時代は、実に退屈だ。」
だが、去っていった友人たちと再会する時はいつか訪れる。長いことずっと待ち続けていた予感が現実となる時がやってくるのだ。
彼女は数多とある装飾品の中から、職人が作った本物の品をすべて選び取った。偽物と比べて、それはあまりにも数が少ない。
そして彼女は彼の名前が刻まれたものを手に、深い夜の中へと消えると、二度と戻って来なかった。
言い伝えによると、翌日、人々は彼女がターコイズの冠を置いた木の下で、
彼女の遺志に従うと誓った。そして、彼女が持ち去った職人の名を歴史から消したという。
他の言語[]
言語 | 正式名称 |
---|---|
日本語 | 主なき冠 Omonaki Kanmuri |
中国語 (簡体字) | 失冕的宝冠 |
中国語 (繁体字) | 失冕的寶冠 |
英語 | Crownless Crown |
韓国語 | 주인 잃은 왕관 Ju'in Ireun Wanggwan |
スペイン語 | Corona Descoronada |
フランス語 | Couronne sans couronne |
ロシア語 | Невенчанная корона Nevenchannaya korona |
タイ語 | Crownless Crown |
ベトナム語 | Vương Miện Quý Không Ngai |
ドイツ語 | Kronenlose Krone |
インドネシア語 | Crownless Crown |
ポルトガル語 | Coroa Descoroada |
トルコ語 | Sahipsiz Taç |
イタリア語 | Corona senza corona |