「聖龍」を自称する者と共に行動する竜狩り人。敬遠されがちな依頼を躊躇わず引き受ける彼は、代償を量ることに長けている。
—公式サイトより抜粋[1]
性格
ウィッツトランの竜狩り人。代償を量ることに長けている。
—ゲーム内のキャラクターステータスとプロフィールページの紹介文
一般大衆には、竜狩り人は現実的で、冷淡で、要領よく見える。 堅実で、率直で、効率的な彼は、人生に対する実用主義的なアプローチを持っており、その外見的な冷たさは、周囲の人々が近づくのを躊躇させる傾向がある。自分が思っている以上に多くのことを理解しているように見えるが、キィニチは他人と距離を置き、皆に話をさせることを好む。カチーナ、ムアラニ、旅人、パイモンとともに巡礼の旅に参加したときのように、キィニチは遠くから会話を観察していることが多い。
懸木の民の中心メンバーであるキィニチはエクストリーム・スポーツが好きで、仲間のクフル・アハウによると、崖から真っ逆さまに飛び降りたが生きていたらしい。ウィッツトラン竜狩り人としての能力に長けており、キィニチは依頼を見極め、騎士道的な礼儀を微塵も感じさせることなく、自信たっぷりに値段をつける。 しかし、キィニチは周囲の意見に動じる様子はない。値段さえ適正であれば、すべての依頼を満足のいく形でこなす。その控えめな性格とは裏腹に、キィニチはいざとなれば交渉したり、口答えしたりすることも苦にしない。そのため、キィニチは何かをタダで受け取るという考えに苦戦する傾向がある[2]。
アハウが彼と口論になることはよくあるが、キィニチは怒りや暴力に屈することなく、上手にそれを止めさせる。 巡礼の旅でカチーナがプレッシャーにさらされていたとき、キィニチはムアラニを助け、風変わりで理屈っぽいやり方にもかかわらず、カチーナを慰めた。動じることのない現実的な態度にもかかわらず、彼は明らかに善意を示し、彼に近づくことができた人々を深く気にかけている。
容姿
キィニチは中背の男性モデルを使用している。キィニチは明るい褐色の肌、青みを帯びた黒髪、トカゲのような目が二股に分かれており、上は緑、下は琥珀色をしている。髪の1本が上にカールしており、その裏側が黄色くなっている。
公式紹介
あいつはオレの従者だ。頭はそこそこ回るし、まあまあ手際もいいほうだが、致命的な欠点があってな——とにかくクソしぶてぇんだ!頭から崖の下に落ちたのにくたばんねぇなんて、あり得るか?ムカつきすぎて、オレのほうが先に死んじまいそうだぜ!
—自称「偉大なる聖龍」クフル・アハウ
「手紙を届けるのに代金を取るのはいいとして、廻焔の夜を執り行うときでさえモラを要求してくるなんて…それでも英雄なのか?」
「別に昨日今日に始まったことじゃないし、依頼はしっかりこなしてくれてるから、それでいいんじゃないか?」
人間と竜が共に暮らすナタで、「竜狩り人」という職業は、誕生時から万人の理解を得ることはなかった。ましてや、英雄を輩出してきたこの地で、任務に値段をつけるやり方に非難が殺到するのも無理はないだろう。
「残酷で無慈悲で冷血な殺し屋」、「現実的で功利的で、英雄たる気質の欠片もない継承者」…何も言い返さない少年に下されたのは、心ない評価ばかりだ。
だが、そんなことを気にする必要などない。
見合う値段さえ提示されれば、どんな依頼でも見事に完遂する。いかに猛威を振るう汚れでも、容赦なく夜神の国へと送り返す。
「廻焔」の名の持ち主は、ターゲットを一度定めたら決して振り返らない。
キャラクターストーリー
キャラクター詳細
ナタは人間と竜が共生する国。長い年月において、互いに支え合ってきた。
数々の友好関係の中で、人間と竜は共に歩み、そして共に退いてきた仲間だ。
しかし、人間に近づくすべての竜が善意を持っているわけではない。今日に至るまで、悪竜に襲われて命を落としてきた人間も少なくない。
そのため、竜の弱点に精通した「竜狩り人」が現れた。キィニチはその中でも特に優れた存在である。
彼はまだ若く、良き師の教えを受けたわけでもない。しかし、長年の野外生活から獣や悪竜を討伐するすべを身につけた。
まるで生まれながらの狩人のように、彼は冷静で実直で効率的。獲物を凝視する目は、骨切り包丁のように鋭い。
しかし、他の竜狩り人とは異なり、キィニチの仕事はそれだけにとどまらなかった。噂によると、モラさえ払えば、彼は裏の仕事でも請け負うという。
そのため、部族の多くの人々は彼を敬遠していた。もちろん、彼が現実的で功利的な性格であることもその一因である——
依頼主が困り果てた人であれ、幼い子供であれ、必ず相応の報酬を要求した。
「万事万物には代償が伴う」という彼の信条は何事があっても、決して揺るがない。そのような振る舞いは人々から非難を浴びやすいものだが、キィニチは弁解する気がないようだ。
いや、どうしても彼にワケを語らせたいのなら、全くの不可能というわけでもない。ただし、必ず彼は手のひらを広げてこう問うだろう——「代償をいくら払う?」
キャラクターストーリー1
好感度Lv. 2
キィニチは七歳まで家族と一緒に暮らしていた。
父親は伝達使だったが、一日働いては三日遊ぶような生活を送っており、その日の給金を賭け事に突っ込んでは一攫千金を狙うのを趣味としていた。
勝てば、キィニチに高価なキャンディを買い、妻には美しい花を贈った。
無論、負ければ一銭も家には入らない。そんなときは同僚から金を借りてその事実を隠し、酒に明け暮れた。
良識のある母親は幼いキィニチを抱きしめ、夫を厳しく何度も注意してきた。時には父親が非を認めて謝罪し、二度と賭け事をしないと約束することもあったが、
鍋や皿を投げつけ合う激しいケンカに発展することもしばしあった。だが、勝つのはいつも体格の良い父親だ。そして母親は黙って畑仕事をすることになる——
このしたたかな女性は力こそ夫に敵わないが、畑仕事は大の得意であった。なにせ三人分の食べ物が必要なのだから、それも頷ける。
そんな日々が続いたある日、父親が賭けで家を失ってしまう。一家は集落から離れた山の麓に移り住むことになった。
ただ、すべてが最悪だったわけではない。より広い土地で暮らせるようになったことで、キィニチはグレインの実を育てたり、トウゴマで縄を編んだり、それからキャッサバ粉で粗い麺を作ったり、罠を仕掛けてイノシシを狩ったりすることを学んだ。
もちろん、良くないことも多々ある。ここでは隣人がケンカを仲裁してくれることはない。母親とキィニチがどれだけケガを負うかは、父親の泥酔加減によって変わった。
ついにある夜、そんな日々に耐えかねた母親が、幼い息子を置いて家を出て行った——こっそりと。きっと夫が地の果てまで追いかけてくることを恐れたのだろう。
キィニチは、母親が別れのあいさつをしてくれたか覚えていない…だが畑仕事、狩猟、そして父の暴力…それら母親の「仕事」を立派に引き継いだ。
成長するにつれて、キィニチは逃げることを覚えた。運動神経が抜群だった彼は、毎日少しずつ速く走れるようになっていく。気づけば、父親はもう簡単に彼を捕まえられなくなっていた。
家から飛び出すたびに、風切り音が父親の怒号を打ち消し、わずかな自由を感じさせてくれた。
それは運命の憐れみなのか、キィニチに真の自由を味わわせようとしてくれたのかもしれない。七歳の誕生日を迎えたとき、彼は初めて父親に母親のことを尋ねた。
無論、答えは分かりきっていた。父親は二日酔いで真っ赤になった目でキィニチを追いかけ、殴りかかろうとしてきた。だが長年の飲酒が体を蝕んでいたのか、父親はその途中で崖から転落してしまった。
キィニチは息を呑んだ。長年一緒に暮らしてきた男が、まるで罠に抗うのに疲れたイノシシのように立ち上がることを諦め、崖下の石ころの間で動かなくなっている。
茫然とした…ただただ頭が真っ白になっていく。そして、酸っぱいものがこみ上げてきた。
目をぎゅっと閉じ、鼻に力を込め顔をゆがめ、涙がこぼれないように必死に耐えた。
しばらくして、彼は父親のカギ縄を拾い上げ、硬直したその体を苦労して引きずりながら、家の方へと歩いて行った。
父親にカギ縄の使い方を教わったことはない。だが、何度か見ているうちに覚えていた。木の枝を次々と飛び越え、風が彼の耳元を通り過ぎていく。
七歳の誕生日——山々は彼に自由という贈り物を与えた。しかし、その箱に詰まっていたのは孤独だけであった。
キャラクターストーリー2
好感度Lv. 3
両親を相次いで失った後も、キィニチは山の麓に住み続けた。
日々の生活は、農業、編み物、狩猟の繰り返しだ。獲った動物を集落で生活必需品と交換することもあった。
時が経つにつれ、集落の大人は、寡黙だが俊敏な少年に深い印象を持つようになった。
そして、生活が苦しいだろうと心配する大人たちは援助をしようとしたが、それらをキィニチはきっぱりと断った。
小さなキィニチの考えでは、この世にタダのものなどない。値段がはっきりしているもののほうが安全で、無償の援助など警戒すべきものであった。
それはまさしく、彼が仕掛ける獣の罠と同じようなもので、背後には代償が隠されているかもしれない。
そのため、彼は慎重に集落の「端」だけを歩き、近づいてくる者との間に適切な距離を保った。
集落に来たときは、必要なものだけを交換してすぐに立ち去るというように…
部族の族親であるリックは、キィニチのすべてを見ていた。族親は子供たちに教えを授ける役目も担っている。
キィニチの父親とも懸木の民の子供の教育問題で関わったことがあった。そのため、キィニチの家庭事情を知る数少ない一人でもある。
ある日、キィニチが集落に来たとき、リックは彼に特別な取引を持ちかけた。
キィニチに講学小屋で勉強することを提案したのだ。懸木の民の子供たちはみな、七、八歳になると学校に通うのが慣例だった。
学費は、代わりに使い走りで支払うことができると言った——学生たちに臨時通知を配達する伝達使が必要だと付け加えて。
しかし、キィニチは拒否した。彼はまだ幼く、学校に通うことの意味を理解していなかったのだ。それよりも走ってイノシシを七、八匹捕まえるほうがはるかに得だと考えた。
リックは苦笑した。実際のところ、講学小屋は無料だったからだ。彼は単に、キィニチの警戒心を解くために少しだけ仕事をお願いしようとしただけだった。
ただ、リックは諦めなかった。一ヶ月かけて、キィニチに講学小屋がどんなところかを説明し、取引の条件を調整した。
最終的に、二人は合意に達した。キィニチは集落に来るたびに学校に立ち寄ることができ、その代わり、暇な時には伝達使の仕事を手伝うという条件だ。
この取引は、両者にとってほぼ満足のいくものだった。しかし、キィニチの入学から卒業まで、たった一日しか掛からないとは誰も思っていなかっただろう。
キャラクターストーリー3
好感度Lv. 4
キィニチが取引に従って学校に来た日、授業を担当していたのは族親のリック本人だった。彼は、子供たちが円になって座っている真ん中に立ち、キィニチに空いている席に座るよう指示した。
キィニチは円の外側に座った。そんな新入生を好奇心いっぱいに見つめる他の子供たち。懸木の民の生活は素朴なものだったが、それでもキィニチの服装はあまりに粗末だった。
彼は額に灰色の布を巻き、粗く編まれた麻の服を着て、獣皮の裙をはき、素足で、まるで野人のよう。
「君、どうして靴を履かないの?」小さな女の子が不思議そうに尋ねた。すると、ガタイのいい男の子とその仲間たちが笑い始めた。「こいつが森に住む泥まみれの猿だからだろ。」
リックは咳をして彼らの笑いを止め、授業開始の合図をした。
「さあみんな、今日は懸木の民の英雄について学ぼう。誰の名前が思い浮かぶかな?」
「マリポのブルキナ!」「ユパンキ様!」…子供たちの声が次々に上がった。
「その通り、私たちの英雄は一人ひとり記憶するに値する。彼らには強さだけでなく、自己犠牲の精神もあったからだ。」
そう言うと、一番後ろに座っていたキィニチが手を挙げた。「なんで自己犠牲なんて選ぶの?」
「理由などはない。それは英雄が生まれながらに持つ美徳だからだよ。」とリックは答えた。「じゃあ、その美徳と引き換えに得られるものは?」キィニチは再び質問した。
「美徳はとても貴重なものだよ。それは交換するためのものではなく、それ自体が天からの贈り物なんだ。」リックは微笑みながらキィニチを見た。
「贈り物?」キィニチの疑問は解けずにいた。「具体的にどんな贈り物?名声?モラ?」
「どれもあるが、それらがすべてではない。重要なのは、それ自体が高貴なものであり、英雄を英雄たらしめるのだ。」
年をとった学者は本を閉じ、彼を真剣に見つめた。しかし、キィニチにはよく理解できなかった。彼は過去のことを思い出した——
山々は、最も高貴なものは腹を満たしてくれるイノシシだと教えてくれた。次に水だ。水がなければ人は死ぬ。
しかし、それらは生まれ持ったものではないからこそ貴重で、もし自分が貴重なイノシシや水を手放すなら、必ず何かと交換したい。
彼はモラが一番好きだった。モラなら他のものと交換できるからだ。
そこでリックにこう言った。「もし俺が英雄になったら、報酬にモラが欲しい。」
子供たちは皆笑い出した。最初にキィニチをからかった男の子が特に大きな笑い声を上げる。「それなら、森に戻って木にでもぶら下がってりゃいいさ!この自分勝手な泥まみれの猿!」
彼の仲間も不満げな様子で立ち上がり、キィニチをドアの方へ押しやった。リックはすぐに彼らを止めたが、キィニチはそのまま外へ出て行った。彼はもうここにいる必要はないと感じた。その小さくて鋭い頭で、一つの真実を見抜いたのだ——
この部屋にいる騒がしい連中は、まだ子供なのだと。彼らは集まって英雄を崇め、まるで自分が英雄の仲間入りをしたかのように、英雄と同じ高貴さを手に入れたと思い込んでいる。しかし、その虚しい栄光は腹を満たすものを与えてくれるわけではない。授業が終われば、彼らはそれぞれ家に帰り、母親に食べ物をねだるだろう。
キィニチには、彼らを少しばかり痛めつけ——例えば一発殴って、数週間寝かせて——彼らが英雄からどれだけ遠い存在かを分からせることもできた。
しかし、無駄に人生経験を積ませてやる必要はないと感じた。彼らは別にお金を払っているわけではないのだから。
とはいえ、この授業が完全に無駄だったわけでもない。少なくとも、彼の疑問に少しだけ光明が差した。
将来はどうする?英雄になろう。報酬としてモラを得るために。
キャラクターストーリー4
好感度Lv. 5
英雄になるためには、強い力が不可欠だ。講学小屋を「卒業」して間もなく、キィニチは一人でリックを訪ね、強くしてほしいと言った。
リックに頷いてもらうために、彼は持っているものすべてを持ち出した。
カギ縄や罠の道具、収穫したばかりのトウゴマ、キャッサバ粉入りの二つの大きな壺、グレインの実の種を詰めた袋、仕留めたばかりのイノシシ、そしてたった数枚のモラ。
年をとった学者はキィニチの差し出した物を笑って断り、たった一つの条件を提示した。「キィニチ、強くなる道で真の英雄とは何かを学びなさい。」
ずっとキィニチのことを気にかけてきたリックは、彼の中に昔の英雄たちの姿を見ていた。
同時に、リックは正しい指導が必要だとも考えていた。もしキィニチが道を踏み外せば、その破壊力はそこらの悪党をはるかに超えるだろう。こうして、新しい取引が成立した。
それから数年、キィニチは森とリックのそばで過ごした。
リックは、キィニチにナタや他の部族の英雄の歴史を教えながら、様々な異才を紹介した。
特別な矢を作る矢師、竜の毒素を研究する呪術医、カギ縄の使い手である老狩人、極限の状況から脱する専門家…
キィニチは何でも学ぼうとし、昼夜を問わず、それらの技術に没頭した。しかし、それだけでは満足できなかった彼は、休みの日に山に戻り、戦闘技術を磨いた。
師匠がいなかったため、彼は山中の野獣の動きを模倣した。敏捷さ、狡猾さ、力強さ——様々な動物の長所を吸収し、独自の武術を編み出した。
実力が備わっていくにつれて、リックはキィニチに部族の仕事も任せるようになった。最初は簡単な伝達使の仕事だ。
キィニチは多くの大人よりも見事に仕事をこなした。普通の伝達使が必要とする半分の時間で彼は済ませる。
その優れた身のこなしのおかげで、次第に人が訪ねてくるようになり、有償で強大な竜を狩る危険な仕事も依頼されるようになった。
リックは最初、キィニチが相談に来ると思っていたが、それは一度もなかった。
彼はまるで十年以上もの経験を積んだベテランのように、いつも依頼の良し悪しを判断し、適切な報酬を言い渡して交渉した。
時には、依頼に偽りや裏がある場合もあったが、キィニチは心の天秤で報酬を調整し、相手が不満を漏らしても押し通した。
このような行動は当然、非難を招いた。そして部族内で人望の厚い人も、キィニチのやり方を不当だと考えた。
しかし、キィニチは何一つ弁解せず、ただ依頼ごとに適切な報酬をつけた。
ある時、祭祀を担当するトリニダードからも声が上がり、キィニチを呼び出して問い詰めようとした。しかし、リックがすぐにそれを制止した。
「聞く必要はない。あの子は自分がやっていることを理解している。」
「前代未聞だ!懸木の民の英雄にあいつのような者はいない!」
「いいや、それは違う。彼は懸木の民の子供ではない。彼は山々の子であり、自分がなりたい英雄になるだけなのだ。」
キャラクターストーリー5
好感度Lv. 6
興味深いことに、一匹狼のキィニチには「クフル・アハウ」と名乗る者が常にくっついている。その名の意味は「神聖なる領主」。
龍の遺物研究会の信頼できる調査によると、正真正銘、アハウは数千年前の龍時代の遺物だという。
その本体は謎の腕輪に封印されており、現在の姿は燃素を借りて現れた形にすぎない。
研究会の学者たちは、アハウの歴史が非常に古く、知識も極めて高いことから研究価値がとても高いと考え、大金をはたいて買い取ろうとした。
しかしキィニチは、アハウの狡猾さや性格の悪さ、また強大な力の持ち主であることを知っていたため、その申し出を即座に断った。
アハウは危険分子だ。その傲慢でずる賢い性格は、混乱を招く。キィニチはアハウの邪悪さを充分に理解していた。
龍の遺物研究会に渡せば、その存続問題に発展するかもしれない。
ただそれ以外にも、アハウを引き渡せないもっと直接的な理由があった——解くことのできない契約を結んでいるからである。
すべては、「龍の秘宝」と噂される古龍の遺跡で始まった。その遺跡は地震によって姿を現すと、すぐさま多くの人の注目を集めた。
しかし、数多の探検隊が調査に乗り出すも、いずれも失敗。その遺跡を探索しようと考える者は慎重にならざるを得なかった。
当時、ナタではすでに名の知れた竜狩り人であったキィニチは、ある探検隊に同行を依頼された。
彼らと共に遺跡に入ると、目に入ったのは群れをなした魔物だ。さらに罠も張り巡らされたそこは、噂以上に危険な場所であった。
一行からは死人や負傷者が出る始末。途中で引き返す者もいた。最終的に深部に辿り着いたのはキィニチただ一人だけであった。
そして、そこでキィニチは封印された古代の存在「クフル・アハウ」と出会ったのである。
キィニチはすぐに相手の声から邪悪さを感じ取った。しかし同時に、邪悪な力であっても利用できないわけではないと考えた。
アハウもまた、ある目的を持っていた——早く外の世界に出たいというものだ。あまりにも長い間、この退屈な場所に封印されていたからだろう…
そして数日にわたって——時には友好的に、時には険悪な——駆け引きの末、
両者は互いに譲歩できるラインをおおよそ理解し、契約を結んだ。
「クフル・アハウ」と名乗る謎の生物は、キィニチの言葉に従うことに同意し、限定的に、条件付きで、節度を持って契約に従い、部分的、一時的に、その力をキィニチに貸すことになった。
その代償として、キィニチはアハウを外の世界へ連れて行き、死後は自分の体をアハウに引き渡すことを約束した。
『セミの静かな丘』
好感度Lv. 4
キィニチは、族親リックの家で学んでいる間、彼の所蔵する数多くの書物やウォーベンを読んだ。
中には、表紙だけをぱらぱらとめくったものもあれば、何度も繰り返し読んだものもある。
しかしどの本も、キィニチが子供の頃に読んだ『セミの静かな丘』にはかなわなかった。リックにその本を勧めたが、
年をとった学者は読了後、文章が粗雑で話が平凡、想像力が貧弱だと評し、しかも未完の手稿であることを指摘した。
キィニチは言葉を詰まらせたが、それでもこの作品への愛着は変わらなかった。なぜなら、この手書き原稿の作者は彼の母親だったからだ。
その原稿には、地下で暮らすセミが描かれている——セミは地下で成長し、地上に這い出て繁殖して、死んでいく。
そうやって代々生き続けてきたが、ある日、地下の環境が突然変化して土壌の温度が急激に上昇し、セミが大量に死んでしまうのだ。
生き残った数少ないセミたちは、より深い地下へと逃げたが、主人公のセミ勇士は地上へと這い上がることを決意した。
何が起きたのかを知り、この危機を解決する方法を見つけられないかと思ったのだ。
しかし地上に辿り着くと、代々セミの繁栄してきた丘は、人間と魔物の大戦によって不毛の地と化していた。
植物は枯れ、大地は焦げつき、漂う灰塵が太陽を遮り、空気中にはセミにとっての毒である燃素が充満していた。それが後に燼寂海と呼ばれることになる場所だ。
セミ勇士は焦げた大地に倒れ、力尽きた。だが命が消える前に、すべての力を振り絞って、亀裂の入った結晶の卵を産んだ…
物語はそこで途切れており、卵から小さなセミが孵化したかどうかは分からない。これが、リックがこの作品を低く評価した主な理由だった。
しかし、キィニチがこの物語を気に入った理由はそこにある。なぜなら、いつかその原稿の続きを見ることができるかもしれないと、期待に胸を膨らますことができるからだ。
神の目
好感度Lv. 6
キィニチは古名を得た後も、歴史上の英雄のように人々のために犠牲になることを約束しなかった。
彼はただ、とある夜巡者の戦争に黙々と参加し、そしてためらうことなく壮絶な死に身を投じた。
そこは危険極まりない戦場。アビスの力は初めて見せる邪悪な特性をもって、よく知る人物に姿を変え、夜巡りの小隊に奇襲を仕掛けてきた。
馴染みのある姿に、戦士たちはみな一瞬固まった。そのわずかな隙を突かれ、彼らは邪悪な存在を前に次々と倒れていった。
キィニチもまた、同じ難敵に直面していた。目の前に現れたのは、記憶の中の母親だ。
彼は昔、こんな想像をしていた。もしいつか母親と再会できたら、必ず『セミの静かな丘』の結末を聞こうと。
しかしその瞬間、狩人の本能が彼の脳よりも早く反応し、母親の姿で微笑みながら腕を広げるアビスの魔物を一刀両断した。
それからキィニチは容赦なく、次々と「見知った顔」を切り伏せた。無論、本当に冷血なわけではない。一つひとつの顔に剣を振るうたび、その心は重くなっていった。
この戦いに勝てば、犠牲になった仲間たちを連れて帰れると理解していたからこそできたことだ。そのため、戦死する仲間が増えるほど、彼の剣はますます鋭くなった。
しかし、魔物の大軍はイナゴのように尽きることはなく、また夜巡りの小隊はそれまでの襲撃で既に大きな打撃を受けていた。
気づけば、そこに立つ人間はキィニチだけになっていた。彼の両目は血でべったりと汚れ、全身は傷だらけ。それでも魔物はなお迫ってくる。
ここで力尽きるのだと、そう悟った。その時、初めてアハウの声から荘厳な響きを感じ取った。
「キィニチ、オレの力も限界だ…」
「でもよ、『クフル・アハウ』の名にかけて、お前の体を貰った後、偉大なる聖龍がお前らのために復讐してやる。」
キィニチは、普段では想像できないような大声で笑った。その笑い声とともに、手の中の剣を再び振りかざし、近づいてきた魔物を二、三体切り裂いた。
だが、もうここまでだ。彼の隙はますます顕著になり、そして、一体の魔物の鋭い爪がその背中を貫いた。
キィニチは体を硬直させ、ゆっくりと頭を垂れる。傷口からは止めどなく血が流れた。それでも彼はよろめきながら前へと進み、魔物をまだ殺そうとする。
地面に滴り落ちる血が弧を描いて繋がり、終幕の楽譜を描いた。力尽きたキィニチは跪く、そして休符が打たれた。
夜巡りの小隊で最後まで抗った戦士、キィニチは戦死した。
アハウは目を閉じ、共に戦った者に哀悼の意を表した。しかし再び目を開けたとき、目の前の光景に息を呑んだ。
何故か、キィニチが再び立ち上がったのだ。それだけでなく、血の色を失っていた両手が再び大剣を握りしめていた。
「キィニチ」は再びアビスの大軍へと突撃する。休むことなく、その剣光は戦場を照らした…
アハウは驚きながらもよく観察する。するといつの間にか、ハートの模様があしらわれた翠色の宝石が、キィニチの貫かれた胸元にぶら下がっていることに気づいた。
宝石は生気にあふれ、意識を失っていたキィニチの体を鼓舞し、疲れを知らない、本能だけで行動する凶暴な獣へと変化させていた。そうして、すべての魔物を斬り殺すまで彼は戦い続けた…
……
再び目を覚ましたとき、そこは聖火競技場だった。周囲を取り囲む人々が熱狂的に反魂の詩を歌っていた。
彼は振り返り、一緒に戦争に参加した仲間たちが、歌声の中で一人ずつ目覚めていくのを見た。
「俺たち…勝ったのか?いったい誰が…」キィニチは自分の胸をさすりながら呟いた。確かに、アビスの大軍の前に倒れたのを覚えている。
しかし、何者かが自分たちを勝利に導いたのは間違いない。そうでなければ、反魂の詩で死者が蘇ることはないのだから。
「なに寝ぼけたこと言ってんだ?お前は、頑丈なイナゴだったってことだ!」アハウはがっかりした様子で地面に倒れ込み、宝石を投げつけた。「オレを手に入れただけじゃ物足りず、神の目まで手に入れるとはな。ケッ!いつになったら、その体を手に入れられるんだか!」
……
新たな命を得た夜、キィニチはベッドに寄りかかり、翠色の神の目を指でなぞった。
彼を取り囲む人々、雷のように響く歓声、神聖で熱い反魂の詩が頭に浮かんだ…
彼はふいに、いつからか自分が最初の目標から外れていることに気づいた。
最初はモラへの憧れから英雄の道を歩み始めたが、今ではもっと大切なものを守りたいと思うようになっていた。
仲間を守り、故郷を守り、人々の笑顔を守る…この変化がいつ始まったのかは分からない。だが、おそらく種はかなり早くに蒔かれていたのだろう。
「英雄は一人ひとり記憶するに値する。彼らには強さだけでなく、自己犠牲の精神もあったからだ…」
「それは英雄が生まれながらに持つ美徳だからだよ…」「それ自体が高貴なものであり、英雄を英雄たらしめるのだ…」
キィニチはリックの最初の授業をぼんやりと思い出した。今の自分が当時よりも崇高で、自己犠牲の精神があるとは思わない。
しかし、当時よりもはっきりと理解していた。欲しいもののためなら、今はどんな代償であろうと払うことができると。
名刺の飾り紋
キィニチ・アハウ | |
---|---|
![]() |
取得: キィニチの好感度がLv.10に到達後獲得。 記述: 偉大なる聖龍クフル・アハウがついにキィニチを自身の魂の入れ物にしたかのような名前だが、残念ながら、これは名刺の命名ルールに沿ったものに過ぎない。 |
命ノ星座
任務とイベント
キャラお試し
キャラクターの紹介
キャラストーリー
キャラクター | ストーリー |
---|---|
キャラボイス
キャラクター | ボイス |
---|---|
| |
| |
| |
| |
| |
| |
| |
| |
|
メール
履歴
豆知識
- 『イグニッションPV「名を鋳る燎火」』では、カチーナ、キィニチ(KNICHとして)、ムアラニの名前がテイワット文字でトーナメントボールに落書きされている。
- キィニチは、楓原万葉と同じ中国語の声優、Banmaを共有している。
- キィニチは両手剣を振り回すキャラクターとしては、荒瀧一斗(乱神の怪力のスタックがないとき)に次いでユニークな重撃モーションを使う2人目のキャラクターであり、回転やコンボ・シーケンスを行うのではなく、両手剣を前方に投げる。
- キィニチは空中で通常攻撃ができる最初のキャラクターである。
- キィニチは以下の1点の調度品の説明で記載されている:
- キィニチの日本語声優である杉山紀彰とアハウの日本語声優である竹内順子は、『NARUTO -ナルト-』シリーズのアニメシリーズとスピンオフ作品で、それぞれうちはサスケ役とうずまきナルト役として共演したことでよく知られている。
語源
- Kinichは、マヤの太陽神のユカテコ語名であるキニチ・アハウにちなんで命名されたと思われる。
- キィニチのゲームプレイはまた、Alebrijes(メキシコの民芸品で空想上の生き物の鮮やかな色彩の彫刻)にも言及している。これは彼の命ノ星座名からもわかる。
その他の言語
キャラ称号: 廻焔を継ぐ狩人
言語 | 正式名称 |
---|---|
日本語 | 廻焔を継ぐ狩人 Kaien wo Tsugu Karyuudo |
中国語 (簡体字) | 回火之狩 Huíhuǒ zhī shòu |
中国語 (繁体字) | 回火之狩 Huíhuǒ zhī shòu |
英語 | Turnfire Hunt |
韓国語 | 회고의 불의 사냥꾼 Hoego-ui Bur-ui Sanyangkkun |
スペイン語 | El Cazador del Fuego Reminiscente |
フランス語 | Chasseur du mnémofeu |
ロシア語 | Охотник Пламени поворота Okhotnik Plameni povorota |
タイ語 | นักล่าเพลิงหวน |
ベトナム語 | Thợ Săn Hồi HỏaHồi Hỏa |
ドイツ語 | Wendefeuerjagd |
インドネシア語 | Turnfire Hunt |
ポルトガル語 | Caçador da Têmpera |
トルコ語 | Bedel Ateşi Avı |
イタリア語 | Cacciatore del Voltafuoco |
脚注
ナビゲーション
|