「豊穣の邦」トレーニングジムのトレーナー。ナタの有名な栄養士にして『帰火聖夜の巡礼勝者レッスン』の創始者。「力」を追い求める者にとって、彼女は間違いなく一番のコーチだ。
—公式サイトより抜粋[1]
性格
「豊穣の邦」トレーニングジムのトレーナー。ナタの有名な栄養士。
—ゲーム内のキャラクターステータスとプロフィールページの紹介文
(To be added.)
容姿
イアンサは小柄な少女で、黒い肌、長い耳、薄緑色の瞳をしている。灰色の長い髪をおさげにしている。 また、鼻の近くと両肩に白いボディペインティングがあるように見える。
イアンサは動物の頭蓋骨をあしらったオレンジと黒のヘッドバンドをしている。アンダーシャツの上にオレンジ、紫、黒のジャケットを羽織り、ドリーム・キャッチャーに似た羽で飾られたビーズのネックレスをつけている。指には指輪をはめ、黒いロングソックスを履いている。
公式紹介
イアンサコーチはナタ最高のコーチだよ。わたしの一番尊敬する人なんだぁ!みんな、わたしに才能があるって言ってくれるけど、コーチの指導がなかったら、わたしの才能は食べることに浪費されちゃってたかも。運動する習慣がなくても大丈夫だよ。イアンサコーチは一人一人の状況に合わせて指導してくれるから!ってことで、このチラシを読んでほしいな。コーチが新しい生徒を募集してるの!
—ヴァレサ
「自分を超えたいか?力が欲しいか?」
「——ならば、豊穣の邦で『帰火聖夜の巡礼』の勝者によるレッスンに参加するべきだ。有名トレーナーの指導を受けて、弱き自分に別れを告げよう!」
ナタに初めて来た人の多くは、このようなチラシを受け取る。豊穣の邦におけるトレーニングの習慣は広く知られており、レッスンに興味を持つ人は多く現れた。だが、チラシにあった「トレーナー」を実際に目にした途端、ほとんどの人はレッスンを詐欺だと思い込み、辞退してしまうのだった。
イアンサは、無理もないことだと思っている。子供のような体格は確かに「強さ」や「力」のイメージとは程遠く、「弱き自分に別れを告げる」という点で指導できるなどと、到底想像できないだろう。
だから、そのような状況に遭遇した時はこう提案することにしている——好きなトレーニング種目を選んで自分と勝負してみろ、と。そう言えば、舐められたと感じた相手は挑戦を受け入れ、騙された怒りをトレーニング器具にぶつけるのだ。
やがて、疲れ果てたお客さんを前に、イアンサは地面に投げ捨てられた器具を拾い上げて、もう十数セットやってのけた。
「いや。トレーニングのメニューを組んで、カロリー摂取量をコントロールし、正しく栄養補給しただけだ。」
このような一部始終を経験すると、多くの人々はイアンサの言葉に疑念を抱きつつも、参加する気にはなってくれるのだった。
キャラクターストーリー
キャラクター詳細
ナタ人が豊穣の邦のことで真っ先に思い浮かべるのは、生活にトレーニングが根付いている点だ。そのため、大半の人がたくましいガタイをしていたり、鍛え上げられた筋肉を持っていたりというイメージをするものだが…
豊穣の邦を初めて訪れた人は、すぐさま驚くべき事実を知ることになる。豊穣の邦のフィットネス界でトップにいる者は、そのイメージと真逆なのである。身長は子供と大差なく、腕や足はほとんどの豊穣の邦の民よりも細いのだ。
この風が吹けば倒れそうな少女こそ、豊穣の邦トレーニングジムの筆頭トレーナー、イアンサである。
彼女を見た人は最初、よそ者をからかうための冗談だと思う。
だが、イアンサが実際に指導している場面を見た人は唖然とするのだ——後ろをついて走る生徒たちが倒れても、彼女が平然と走り続けている姿に。
やがて、イアンサはすべてのナタ人が見守る中、帰火聖夜の巡礼で全勝記録を叩き出した。
そして今、イアンサはナタの全土で認められる一流トレーナーとなっている。しかも彼女はなんと、帰火聖夜の巡礼で勝つコツを伝授する養成プログラムまで組んだのだ。
人々はイアンサの強さに驚嘆し、同時にその強さがどこから来ているのか疑問に思った。すると「イアンサは背が伸びない代わりに、超人的な力を得られる特別な血筋である」という噂が流れ始めた。
しかし、好奇心旺盛な他部族の人が豊穣の邦の民にこの噂を確認しようとすると、冷ややかな目で見られる——
「ふん、トレーニング不足だな。」
豊穣の邦の民はそう言い放つと、引き続きトレーニングで汗を流す——自分のどこが悪かったのかと疑問に思っている他部族の人をそのまま放置して。
そして、新たな噂が流れ始めた。イアンサが持つ力は豊穣の邦の秘密兵器だから、みんな口裏を合わせて隠しているのだと。
そんな噂が広まったとき、イアンサはそれを信じる人たちに声をかけた。
「アタシと同じ力を手に入れたいのか。じゃあ、うちのレッスンに参加するといい。キレッキレに仕上がるぞ!」
驚いた人々は、イアンサの言葉を信じていないのか、はたまたイアンサのレッスンの恐ろしさを知っているのか、大半がその勧誘を断った。
それからも、イアンサに関する様々な噂は絶えず流れ続けた。それに関して、イアンサはたまにトレーニングの合間に愚痴をこぼす。
「トレーニングの成果だって言ってるのに、なんでみんな信じてくれないんだ?」
キャラクターストーリー1
好感度Lv. 2
物心がついた時から、イアンサは自分の身長が一生伸びないことを知っていた。
何故なら彼女は、先祖代々子供の身長のまま亡くなった「ウォググンの血」を引き継ぐ一族に生まれたからだ。
豊穣の邦はナタで最も強靭な体を持つ部族である。しかし、イアンサの一族は異端だった。イアンサの祖先も、他の部族の民と同じように強くなりたいと願っていたが、彼らの血筋がそれを許さなかった。また、彼らはこの血筋から代わりとなる特別な力を得られたわけでもなかった。この血筋より、おとぎ話に出てくる「冒険者に大事なものと引き換えに特別な力を与える魔法使い」の方が、何倍も公平に見えた。
幸い豊穣の邦の民は心優しかったため、何の差別もなくイアンサの一族を受け入れ、守るべき対象として扱った。戦争が起こるたび、イアンサの一族は裏方に配置され、負傷者の治療や食事の用意などの雑務を担った。彼らは部族の戦士のように勇敢さと機敏さがない代わりに、繰り返される日常生活の中で計画通り行動する力を得たのだ。
イアンサは物心ついた時から両親と共に働き、幼くして頼もしい助手となった。しかし、勤勉で落ち着いた両親とは違い、イアンサは戦場に対する不安感を抱え続けていた。仕事の合間に、彼女は戦場の近くまで赴き、戦士が帰ってくるであろう方向を見つめた。その視線は往々にして何の結果ももたらさず、イアンサはすぐ責任感の強い部族の戦士たちに両親のもとへ送り届けられた。彼女も両親のように、「ワァゴグンの血」によって決められた生活を続ける運命にあったと思われた。
しかしある日、部族で誰一人予想していなかった異変がイアンサに降りかかった。なんと「力」の古名が彼女を継承者として選んだのだ。
部族の人々とイアンサ本人は大いに驚いたが、古名の銘文ははっきりとしており、そこに疑いの余地などなかった。イアンサは部族の注目の的となったが、その視線のほとんどは友好的なものではなかった。「力」という古名は豊穣の邦にとって非常に重く、最高の栄誉であると同時に大きな責任でもあったのだ。心理的にも身長的にも、大多数の部族の人々はイアンサを見下し、彼女が栄誉を手にする資格と責任を担う能力を本当に持っているのか疑問に思っていた。
この件に関して最も心を砕いたのは、やはりイアンサの両親だった。彼らは勤勉で真面目だが、同時に規則を重んじていた。自分たちがこの件に対して建設的な意見を出せる立場にないと悟っていた二人は、娘の前で長らく沈黙するしかなかった。しかし、沈黙の末、二人はほぼ同時にイアンサの決断を尊重する意思を表した。
そして数日後、イアンサは族長兼トレーニングジムチーフトレーナーのアカトルを訪ねた。
「コーチ、筋トレがしたいです!」
キャラクターストーリー2
好感度Lv. 3
豊穣の邦では、帰火聖夜の巡礼に次いで、トレーニングが神聖視されている。豊穣の邦の民は、全員がトレーニングすることを良しとし、みな自分のトレーニングの成果を誇りとしている。
しかし、イアンサがフィットネスジムに来ても、他の人たちは「この子は早々に諦めるべきだ」と多かれ少なかれ思っていた。当時の人々にとって、イアンサにとってフィットネスは合う合わないの問題ではなく、安全かどうかの問題だったのだ。何しろ、ジムには重さがイアンサの体重以上もある機器がごろごろあったのだ。
ゆえに、みなジムへの入会条件と称してイアンサの前に初心者用の機器を並べ、彼女を諦めさせようとした。だがイアンサは引き下がらなかった。彼女は小さなバーベルを選び、全身の力を以って挑んだ。しかし、バーベルが地面を離れる前に骨の折れる音が周りに響き、イアンサは慌てて制止された…
イアンサが再び歩けるようになったのは半月後だった。酷い骨折により数カ月もベッドから動けない事態にならなかったのは、治療を得意としている父親のおかげだった。そしてイアンサの怪我が治ったと聞きつけ、アカトルがお見舞いにやってきた。それまでの間アカトルはイアンサを止めなかったことで大勢からから非難を受けていたので、今回は自ら自分を説得しに来たのだろうと、イアンサは不安に思っていた。
「トレーニングをするには、身体的条件を満たさないといけないとでもいうのか?」
「トレーニングに必要なのは資格ではなく、選択だ。」
アカトルはイアンサの不安を拭い去り、ジムを創設した者の話を始めた。
メツカーラという名の勇士も、かつては豊穣の邦の族長だった。強靭な体格を持つ彼は、類稀なる力持ちであった。メツカーラが生きていた時代、豊穣の邦は建設から数代しか経っておらず、まだ聖山の麓に根を下ろしきれていなかった。彼は自分の強靭な体格に物を言わせて猛獣やマグマに対抗し、守護神のように昼夜問わず部族を守っていた。しかし、聖山が活発期に入り、マグマの活動が激しくなるにつれ、メツカーラもさすがに疲労を覚えるようになった。庇護を求める部族の民は日に日に増え、彼一人ではどうしようもなくなっていた。それでもメツカーラは逃げなかった。
「ならば俺になるがいい。皆俺のようになれるんだ!」
彼は部族の民を生徒と見なし、自分のトレーニング方法を惜しみなく授け、彼らを率いて部族の脅威に立ち向かった。幾度もの試練を乗り越え、人々は次第に自分たちにも故郷を守る力があると気づき始めた。メツカーラが歳を取り、歳月に抗う力を失った時、彼の多くの生徒はすでに彼を超え、豊穣の邦の国の新たな城壁となっていた。最終的に豊穣の邦は安定し、みな聖山の麓で平和に暮らせるようになった。
「これがトレーニングジムの起源で、オレがさっき言った言葉はメツカーラが後世に残した忠告だ。『トレーニングは誰もがしていい訳じゃない』と言ったら、真っ先に彼が否定してくれるだろう。」
「イアンサ、お前が入門用のトレーニング機器すら使えなかったことは耳に入っている。しかし、これは別にお前がトレーニングをする資格を持っていないことを意味しているわけではない。これが意味するのは、お前のような身体条件を持つ人を知るトレーナーがほとんどいないがために、お前を指導できる人がいないことだけだ。だからオレには、トレーニングがお前にとっていばらの道であるということを、説明する義務がある。」
「だが、選択をするのはお前だ。」
アカトルが去った後、イアンサは当初自分の古名を知ったときと同じように、数日間黙ったまま考えた。最終的に、イアンサは再びアカトルを訪ねた。
「コーチ、筋トレがしたいです!」
イアンサはジムに戻った。ジムのメンバーは以前のように「歓迎」をするのではなく、イアンサを新しく作られた場所に案内した。この場所は大柄な人たちがトレーニング機器を振り回す危険なエリアから離されており、特別な休憩スペースまで用意されていた。どうみても、わざわざイアンサのために作られた場所だった。
今回、彼女に注がれる視線には心配だけでなく、敬意まで含まれていた。皆、彼女が孤独な修行の道を選んだことを知ったのだ。
キャラクターストーリー3
好感度Lv. 4
ジムに入ったばかりの頃、トレーニングを通じて強くなるイアンサの決意は一度も揺らいだことがなかった。しかし、数日に一度襲い来る痛みは彼女の意志に関係なく、相変わらず酷いままだった。
かつてのトレーニングジムでは、競争心を煽るトレーニングが流行っていた。ほとんどのメンバーは筋肉痛の強弱をトレーニングの成果を測る基準にしており、自分の限界を突破しようと挑戦する人も多かった。
そしてイアンサの怪我の大半は、このトレーニングを真似たがために起こっていた。
あるリハビリ期間中、イアンサは杖をついて、部族の民が集まるジムを眺めながらボーっとしていた。その時、彼女はふと、自分がトレーニング機器から高みへ挑む興奮や高鳴りを感じなくなっていることに気づいた。代わりに、先日脱臼した関節がじんじんと痛むだけだった。
その時、イアンサは初めて自分がトレーニングに向いていないのではないかと思った。
一週間もの間ふさぎ込んでいるイアンサから、母親は心の戸惑いを感じた。娘が苦しんでいるところを見ていられなかった優しい母親は、彼女を元気づけようとした。
「私たちにはできないことがたくさんあるわ。でも、代わりにできることもあるのよ。怪我を治したり、ご飯を作ったり…」
しかし、母親は結局沈黙した。ジムの先輩たちですらイアンサに適切な指導ができなかったのに、トレーニングの「ト」の字も知らない自分にできることなんてない。しかし、母親のその思いとは裏腹に、イアンサの目には光が戻った。
「そうだ、アタシたちは怪我の手当てと料理が得意なんだ!」
一か月休養した後、イアンサは再びフィットネスジムに戻った。今回の彼女は先輩たちの筋肉の見せ合いっこを見ることもなく、トレーニング機材と格闘することもなく、ただ鍋を用意し、運動し、記録し、ご飯を作った。
彼女は毎日ただ決まった動きを繰り返すだけで、一見のんびりしているように見えた。しかし、ほとんどの時間をスケジュールで埋めるほど、忙しくしているようにも見えた。また、彼女は他の人のようにストイックに自分の限界に挑むことなく、自分に緩くしているように見えた。しかし、三度の飯を自分で作り、厳しく食材を制限しているがために、自分に厳しくしているようにも見えた。
この数週間に渡る怪しい行動は、ついに皆の注目を集めた。イアンサが血筋を突破するトレーニング法を見つけたという噂が流れたため、みな新しいポージングを見物するように、イアンサを見物しに来た。
「簡単に言えば、トレーニングメニューを組んで、カロリー摂取量をコントロールし、正しく栄養を補給した。それだけだ。」
一通り交流した後、好奇心に駆られた人々はがっかりしたように散っていった。彼らにとってイアンサが説明した内容には何も特別な点はなく、それをするだけで限界を突破できるなんて到底思えなかった。
しかし、皆はイアンサの数値がトレーニング方法を変えてから明らかに上昇していることに気づかなかった。腕立て伏せを五回多くできるようになり、走れる距離も五百メートル増えた。しかし、他のメンバーにとってこれらの増加量は微々たるものであり、興味を示すまでもなかった。イアンサだけが、確実に上昇している数値は鋼鉄の表面に走った細かいひびのように、何らかの変化を意味していることに気づいた。
当時のイアンサは、自分がナタの栄養学の創設者になったとも気付かず、ただ自分にピッタリのトレーニング法を見つけたと喜んでいた。
キャラクターストーリー4
好感度Lv. 5 •
灼烈の反魂の詩
イアンサは、豊穣の邦のとある風習を通じて竜の仲間が出会った。豊穣の邦の民はライノ竜と力比べをすることを好み、その力比べにおける勝利を名誉と見なしていた。ジムに入ってからしばらく経ったイアンサもこの勝負に挑戦したが、当時の彼女が全身の力を振り絞っても、ライノ竜一匹動かすことができなかった。その頃、イアンサはよくトレーニング機器で怪我をしていたので、皆はこの勝負がイアンサにとって危険だと心配した。そこで、先輩を通じてイアンサはイモラと知り合った。当時のイモラは生まれて間もないのに両親を失い、部族に引き取られたばかりだった。まだ仔竜だったイモラは、イアンサにとってちょうどいい練習相手だった。
親の愛を受けずに育った子供と過度に甘やかされた子供の間には、自然と競争心が生まれる。互いに互角だと明確に認め合った後、双方の心の炎はより燃え上がった。初めての対決では、自分に親を守る力がなかったと悔しがるイモラも、親を守る力を望むイアンサも、全力を出し切った。結局、二人とも力が尽き、勝負は引き分けとなった。
そして、二人は正式にライバルとなった。
自分に合うトレーニングを見つけたイアンサは、成長こそ遅かったが、自分の限界を超えた。したがって、この時はイアンサが優勢だった。
一方、両親を失った悲しみから抜け出したイモラはぐんぐんと成長し、気づけばイアンサを追い抜いていた。
イアンサの成長は徐々に部族の注目を集めた。彼女はとある事件でライノ竜の頭領を打ち破り、最終的にはなんとアカトルに代わってトレーニングジムのチーフトレーナーとなったのだ。
イモラの成長も、皆の予想を遥かに超えた。体格はとっくに一族の中で最も大きくなっており、最終的に新たな頭領の座に就いた。
そして、一人と一匹の競争はまだ続いていた。相変わらず両者は高みを目指して、相手を振り切ろうと努力している。
しかし互いに速度と力を比べ合うと同時に、イモラはイアンサが背中に乗ることを許すようになり、彼女を乗せて遠くの荒野を一緒に眺めるようになった…
アビスとの戦争が終わった後、イアンサは生徒たちに導かれ、イモラが埋葬された場所にやってきた。イアンサを最後にイモラに逢わせられなかったため、生徒たちは自責の念に駆られていた。
「あの時の敵の量は尋常じゃなかったので、この子も突撃したらもう戻れないとわかってたはずなんです。でも、それでも…コーチがいたら、きっと止められたはずです…」
「いや、アタシがいたら、一緒に突撃してた。コイツに負けないスピードでな。」
イアンサは亡き友人を偲ぶために花を捧げ、イモラと共に心に決めた、誰もが知らないルールを口にした——
「前に進まなければ、守りたい人を守れないんだ。」
キャラクターストーリー5
好感度Lv. 6
帰火聖夜の巡礼の角笛が響き、イアンサはふたたび聖火競技場で新たな連勝記録をたたき出した。
もう彼女のコーチとしての資格を疑う者も、彼女の小さな体格を笑う者もいなくなった。イアンサの成績に感嘆する者もいるが、彼女はその声に動揺することなく、自分のトレーニングメニューと栄養レシピを更新し続け、己の理念を実践し続けた。
しかし、イアンサが驚いたのは、皆が彼女の血筋や、彼女の「才能」について話し始めたのだ。他の部族の人々は、イアンサの一族について知らないし、彼女がどれほど努力してきたかも知らない。彼らはイアンサが見せた力に驚き、様々な憶測を抱いた。皆の噂の中で、「ワァゴグンの血」はなんと神の力を持つ者の象徴となった。イアンサは身長が伸びない代償で、常人では手に入れられない力を手に入れたというのだ。
その結果、イアンサはさらに多くの驚きの声を得ることになった。かつてイアンサに負けた相手たちも、「才能」の差を認め、イアンサへの賞賛と共に、自分たちの敗北に理由を付けたのだ。
イアンサだけは沈黙していた。気にも留めていなかった感嘆の声が、今は彼女の眉をひそめさせた。
少しして、豊穣の邦トレーニングジムのメンバーが聖火競技場でチラシを配り始めた。チラシを受け取った人は部族のイベントの招待状だと思ったが、チラシを読んで驚愕した。
「帰火聖夜の巡礼勝者レッスン、生徒募集中!部族も性別も年齢も問いません!あなたも連勝記録を破る者になれるかも!」
チラシの配布者がイアンサ本人であることを確認し、皆の驚きは疑問に変わった。「ワァゴグンの血」の噂はとっくに人々の心に深く根付いており、血筋を超えることができるトレーニングの存在など、誰も信じなかった。したがって、みなこれはイアンサのジョークだと推測するしかなかった。
一方、イアンサはすべての推測を否定し、チラシを配る仕事にも参加した。一部の好奇心旺盛な人がチラシの示す申し込み場にこっそり様子を見に行ってみると、イアンサはすでにフィットネスジムを集落から聖火競技場に近い場所に移していた。どうやら他の部族の生徒を募集する準備も整えているようだった。
ほとんどの人は様子見を貫いていたが、「やってみようかな」という考えの者が数名彼女のジムにやってきた。この人たちは昔のイアンサと同じく、自分の弱さを悔やみ、強くなることを望む人ばかりだった。しかしイアンサと違い、この人たちは前に進むことを躊躇っていた。そしてイアンサのトレーニングは彼らに明確な方向と前に進むモチベーションを与えたのだ。
「そう、アタシたちの進む速度を決める才能は重要だ。アタシでさえそれを否定できない。だが、才能はアタシたちがどこまで行けるかまでは決めない。」
一年後、イアンサが当初に宣伝したように、彼らは新たな帰火聖夜の巡礼の中でよい実績を収めた。イアンサの努力のおかげで、多くの生徒が彼女のもとで限界を突破したのだ。その中には、イアンサを超える者すら現れた。
それでも、懐疑的な態度を抱く人のほうが大半を占めていた。しかし、イアンサの心に不安はなかった。応募者が明らかに増えていたからだ。第二期のレッスンが始まる頃、イアンサのチラシにはこの一文が添えられていた——
「力は生まれつきのものではなく、努力なしで得られるものでもない。」
イアンサは、自分を突破した時に古名を実践したことになると理解していた。しかし、彼女はもっと遠くへ行きたいと思った。この言葉は、「力」という古名に新たな記述を加えるためのものだ。いつか、彼女は豊穣の邦をねじ伏せように、ナタ全体に自分の理念を証明するのだ。
アレー
好感度Lv. 4
遥か前から、模様が施されたその頭蓋骨は、イアンサのトレードマークとなった。この頭蓋骨は、不幸にも亡くなったあるライノ仔竜のものだと言われている。イアンサがこの頭蓋骨を残したのは、かわいそうなあの子を記念するためだったのかもしれない。
ある日、イアンサが一人で訓練しているところを遠くから見た数名の学生が、彼女の頭蓋骨が独特な大声をあげていることに気づいた。それは、まるでイアンサの代わりに号令を出しているようだった。
「つまり、あれって生きてるの?」
「おっ、紹介してなかったな。この子はアレー、アタシのトレーニングの助手みたいなもんだ。でも人見知りだから、他の人がいる時は黙ってるんだ。」
驚く学生たちに向けて、イアンサは初めてこの骨について語り始めた。ある日、イアンサの竜の仲間であるイモラが突然彼女のもとにやってきて、助けを求めた。なんとイモラはライノ仔竜の魂が自分の遺骨の近くを徘徊し、夜神の国に行くのを躊躇っていると言うのだ。イアンサは謎煙の主の大シャーマンのシトラリに依頼し、魂が彷徨い続けて消えることがないよう、ツィツィミメを作る巫術でライノ仔竜の魂を遺骨に封じ込めるよう頼んだ。
そう言って、イアンサはなだめるようにあの頭蓋骨を優しく撫でた。
「アタシがトレーニングすると、いつも応援してくれるんだ。多分仲間みたいにかっこよくて強い成年ライノ竜になりたかったから、離れようとしないんだろうな。」
神の目
好感度Lv. 6 •
灼烈の反魂の詩
イアンサがチーフトレーナーになる前、かつて重いバーベルがジムの中央にずっと置かれていた。
これはトレーニングジムの創設者が残したもので、トレーニングの頂点に登り詰めた者だけが持ち上げられるとされていた。そして、それを持ち上げた者はナタのトレーニング界の新たな指導者となる。そのため、このバーベルはすべてのトレーニングマニア共通の挑戦目標となっていたが、未だ誰一人成功していなかった。
挑戦者がこのバーベルの前に来るたび、近くの人々は集まり、挑戦結果について予想し、賭けをする。豊穣の邦の人々にとって、このバーベルを持ち上げることは己のトレーニング成果を示す極上の証明となるため、その座を争うと同時に、最終的にいったい誰が持ち上げるのか、みな興味津々だった。
ある日、イアンサはこのバーベルに近づき、考え込んだ。近くにいた人々は彼女の目から滲み出る欲望に気づき、慌てて止めに来た。
「このバーベルを持ち上げるのに、どれだけの力が必要かわかっているのか?」
人々の声にはイアンサがこのバーベルを持ち上げられるかどうかという疑問と、心配が含まれていた。彼女がこのバーベルに挑めば、初めてジムでバーベルを持ち上げようとした時よりひどい怪我を負うと皆思っていたのだ。
「では、『千日分の力』で持ち上げよう!」
しかし、皆の心配に対して、イアンサはこう答えたのだ。
皆はこの「千日分の力」が何を意味するのか分からず、イアンサがまた変なトレーニング法を研究し始めたのだと思った。そしてイアンサが自分を傷つけようとしていないことを確認して、それぞれ散っていった。この時のイアンサの目に宿ったのが欲望ではなく、決心であるということに気づく人はいなかった。
最初の百日間。イアンサはいつものように自分で決めたトレーニングメニューを繰り返していた。この「トレーニング」はあまりにも平凡かつ退屈で、誰の目も惹くことがなかった。しかし、彼女は先祖代々そうして働いてきたように、毎日同じことを続けた。彼女を止めに入った人は彼女が豪語していた内容をすっかり忘れ、ジムの様子もいつも通り平穏だった。
三回目の百日間。イアンサのトレーニングに変化が見られるようになった。強度を上げたせいか、イアンサは再び怪我に悩まされるようになったが、両親から学んだ手当のおかげか、自分で作った栄養食のおかげか、いつもすぐ回復できた。あの退屈なトレーニング法は未だ続いており、少し成果が出ただけで自慢したがる他の人と比べて、イアンサはまるで静かに回り続ける臼のようだった。目立たない隅っこで、日々ゆっくり繰り返し回り続け、まるで何かをすり潰そうとしているかのようだった。
五回目の百日間。クラブのメンバーはいつものように筋肉の見せ合いっこをしながら、一部のメンバーが己のだらしなさによりトレーニングの成果が台無しになったことを語っていた。ジムではよくあることだが、ほとんどのメンバーは「一ヶ月で腹筋を作る方法」などを熟知しているため、短期間の筋肉の変化を気にする人はほとんどいないのだ。
七回目の百日間。周りを観察する人はなにかの変化を察知したが、その違和感がどこから生まれているのかまではわからなかった。しかし、とある部族を一年離れていた人の驚きの声を聞いて初めて、皆は驚愕の事実に気づいた。なんとイアンサは皆と同じトレーニング機器を使うようになっていたのだ。五百日にもわたって着実に訪れた変化は、あまりにもゆっくりだったため、誰にも気づけなかったのだ。
九回目の百日間、ついに誰かがイアンサが自分のために作ったトレーニングメニューを発見し、彼女が遥か前に建てた計画を思い出した。かつてイアンサを止めようとした人たちは、今回において止めることを躊躇った。長らく回っていたイアンサという臼は、遂に皆の心にある何かをすり潰したのだ。
最後の百日間、イアンサのスペースは人々の注目の的となった。いつからか、イアンサはトレーニング成果を皆に見せるようになった。人々は彼女の周りに集まり、少し前独りでライノ竜の頭領に立ち向かった彼女の偉業を称賛した。しかし、彼女は全く意に介さず、誰からも注目されていない時から続けていたメニューを、ひたすら着実に行っていた。
遂に千日目が訪れた。三年近く経った今、イアンサはようやくあのバーベルの前に再び立つことができた。部族のトレーニングマニアたちはイアンサの周囲に集まり、彼女が起こすであろう奇跡を心待ちにしていた。前とは違って、今回彼女の成功について議論する人はいなかった。いままでの九百九十九日間を見届けた彼らにとって、この「奇跡」はイアンサにとって造作でもないように見えた。
イアンサはバーベルの前に近づくと、キラキラと輝く神の目が、いつの間にかバーベルの横棒に掛かっていることに気づいた。
イアンサは、自分が自身の「願い」に直面していることを理解していた。しかし、彼女にとって自分が向き合ってきたのはトレーニングメニューの「目標」に過ぎなかった。それでも、自分にとってこの二つは同じなのかもしれないと彼女は思い直した。
イアンサは神の目を外し、日々のレーニングメニューをこなしていた時のように、バーベルを持ち上げた。
名刺の飾り紋
イアンサ・根気 | |
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取得: イアンサの好感度がLv.10に到達後獲得。 記述: 「必要なら、夢の中でも鍛錬を怠っちゃダメだぞ…ちょっと努力さえすれば、誰でもできるんだ!」——と言われたが…本当だろうか? |
命ノ星座
任務とイベント
キャラお試し
キャラクターの紹介
キャラストーリー
キャラクター | ストーリー |
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キャラボイス
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豆知識
- イアンサは、同じ体型のキャラクターの中で、初めてユニークなランニングアニメーションを持つキャラクターである。トレーニングジムのトラクターという職業と、夜魂の加護を受けた状態であること、そして他のキャラクターが気まぐれなランニングアニメーションをするのに比べ、よりプロフェッショナルな高速ランニングであることとの一貫性によるものだろう。
- 琉鱗石はオーバーロードリアクションで割ることができるが、イアンサンの通常攻撃3発目のダンベルでも割ることができる。イアンサン固有の特性なのか、それとも豊穣の邦の全キャラクター固有の特性なのかは、今のところ2体しか出ていない(ヴァレッサは雷の法器である)のでまだわからないが、おそらく後者だろう。
語源
- Iansanの名前は、ヨルバ神話や、カンドンブレやサンテリアといったアフロ・ラテンアメリカの伝統宗教に登場する神、オリシャ「Ọya」(Ọya-Ìyáńsàn-án, Iansã, Iansanとしても知られる)にちなんでいるのかもしれない。火、嵐、稲妻、ハリケーン、死、再生を司る戦士の女神である。
- Ọyaはしばしば紫色と結びつけられ、イアンサのデザインのアクセントとして登場する。
- 死と再生を司るだけでなく、Ọyaは死者の領域を支配し、墓地の入り口に住むとも言われている。
- ヨルバ宗教では、エグングン(Ará Ọ̀runとしても知られる)は集合的な力であり、亡き祖先の霊の目に見える現れであり、追憶、祝賀、祝福のために定期的に人間社会を再訪する[2]。
その他の言語
キャラ称号: 百折不撓の熔岩
言語 | 正式名称 |
---|---|
日本語 | 百折不撓の熔岩 Hyakusetsufutou no Yougan |
中国語 (簡体字) | 熔石百炼 Róngshí Bǎiliàn |
中国語 (繁体字) | 熔石百煉 Róngshí Bǎiliàn |
英語 | Tempered in Molten Stone |
韓国語 | 불굴의 용암 Bulgur-ui Yong'am |
スペイン語 | La Entrenadora Funderrocas |
フランス語 | Forgée dans la roche volcanique |
ロシア語 | Непрерывная закалка Nepreryvnaya zakalka |
タイ語 | ร้อยหลอมศิลาแกร่ง |
ベトナム語 | Phôi Đá Bách LuyệnBách Luyện |
ドイツ語 | Von geschmolzenem Gestein gehärtet |
インドネシア語 | Tempered in Molten Stone |
ポルトガル語 | Forjada na Pedra Ardente |
トルコ語 | Kızgın Kayalarda Dövülmüş |
イタリア語 | Temprata nella roccia lavica |
脚注
- ↑ 原神公式サイト: イアンサ
- ↑ Egungun's Wikipedia article
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